「都市型住宅の古典」と呼ばれた「狭小住宅の金字塔」
2026.01.21
©日経クロステック
『塔の家』と名づけられた建築家・東 孝光の自宅兼事務所は、1966(昭和41)年、ますます都市化が進む高度成長期の真っ只中、東京・青山のキラー通り沿いに建てられた。当時33歳であった建築家・東 孝光は「どうしても都心に住もうという決心」でこの住まいをつくりだした。そして、これまでになかったこのような住宅の出現は建築界において一つの事件であり、その後都市型住居の「古典」とまで呼ばれるようになった。


敷地はなんと6坪である。建築面積が3.6坪(一階あたりの面積は階段などの全てを入れて7畳)。それでも6層あるので延べ面積は20坪の住まいである。内部は「搭上に垂直方向につながったワンルーム」で地階より書庫&作業室、車庫、居間、洗面浴室、寝室、最上階が子供室になっている。仕上げは内外とも打ち放しコンクリートに単純化され、吹抜け、レベル差、ワンルーム化、屋根裏部屋、地下室といった都市型、狭小敷地での手法すべてが出そろっている。

© Murai Osmu 村井修 / © Courtesy of Azuma Architects

© Murai Osmu 村井修 / © Courtesy of Azuma Architects
この建築が発表された当時(1966年)は、周りの多くの建物が木造2階建てであったが、現在はビルの間に埋もれた感がある。しかし、都市に住む「意地の住まい」として、状況に抵抗する力強さは記念碑的意味において今も変わりない「狭小住宅の元祖」である。

©Nacasa & Partners
建築史上において多くの建築家に影響を与えた建物のひとつとして知られ、打放しコンクリート、狭小住宅の先駆けともされている。2003年にはDOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選ばている。日本の建築の巨匠・安藤忠雄も「塔の家」の影響を強く受けているらしく、当時のRC(鉄筋コンクリート)で造る狭小住宅には何か流れのようなものを感じさせてくれる。
もし、狭小地で住宅を考えている方は、一度はこの間取りに目を通すと考え方が広がるのではないかと思う。いかに、狭い空間を上手に使い、広く見せるか。このことにここまで突出した建築作品はなかなか現れないと思う。
さて、『塔の家』の主な特徴を以下①~⑥にまとめてみると、
➀狭小地の最大限の活用:わずか約20㎡(6坪)の敷地に、地下1階・地上5階という高さを利用して居住空間と駐車場、仕事場を収容。
②塔状の形態:都市の風景にそびえ立つオブジェのような外観で、周囲の環境と対比しつつ独自の存在感。
③内部の開放性:玄関以外に扉や壁、間仕切りがほとんどなく、吹抜けや階段の配置を工夫することで、狭さを感じさせない広がりと機能性を持つ。
④打放しコンクリート:無機質で力強い素材感は、コンクリート打放し住宅の代表例としても知られ、建築史に大きな影響を与えた。
⑤都市型住宅の先駆け:職住接近のライフスタイルを追求し、限られたスペースで豊かな生活を送る可能性を提示した「狭小住宅の金字塔」である。
⑥機能美と体験:建築家・東孝光氏の自邸であり、家族との共同生活の中で試行錯誤され、機能性と美しさを両立させた住宅として、多くの建築家や学生に影響を与え続けている。
これらの特徴から、「塔の家」は都市の狭い土地における住まいのあり方を問い直す、革新的で多義的な建築として高く評価されている。
🔳概要データ
・塔の家(東 孝光 自邸兼事務所)3人家族(夫婦+子供)
・所在地:東京都渋谷区神宮前3-39-4
・設計:東 孝光(あずま たかみつ 1933.9.20~2015.6.18)
・構造:鉄筋コンクリート造(壁式工法)
・敷地面積:20.56㎡( 6.21坪)
・建築面積:11.80㎡( 3.56坪)
・延床面積:65.05㎡(19.67坪)
・竣工:1966年(昭和41年)
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