千北 正 ブログ

『 狭い家(狭小住宅)は「住いの原型」であり「未来の家」』

2020.07.19

T&Wでチーフデザイナーをしております千北 正(チギタ タダシ)ともうします。        久々のブログ投稿です。狭い家(狭小住宅)は「住いの原型」であり「未来の家」の紹介です。あの偉大な建築家も狭小の「小さな家(湖の家)」にこだわっていました。建築に興味のある人ならば、「小さな家」と聞いて真っ先に浮かぶのが、近代建築の巨匠、ル・コルビュジェの「小さな家(両親の家)」なのでは?コルビュジェが36歳のとき、1924年竣工の両親のためにスイスのレマン湖畔に建てた平屋住宅で、父親は約一年暮らして他界。その後、母親が一人で101歳まで過ごしたことから「母の家」とも呼ばれています。この家を知ったのは日本大学藝術学部(日藝)を卒業した3年目の夏、ICSカレッジオブアーツ(旧:インテリアセンタースクール)教職助手職時代に購入した一冊の白く小さな著書。ル・コルビュジェ著「小さな家」1980年森田一敏 訳でした。

 

レマン湖からわずか4m、風景に溶けこむように建つ小さな家。庭では家庭菜園ができ、屋上庭園もある。リビングダイニングには機能的な折り畳み式テーブルが。奥はゲストルームで、可動式の家具や壁で室内を仕切る。間口4m、高さ2.5m、長さ16mの細長い箱で、延べ床面積は60㎡。わずか18坪のコンパクトな家ですが、湖に面した長さ11mの横長の窓からはたっぷり日差しが入り、湖の向こうに雄大なアルプスを望むこともできる自然と調和したのびやかな家。

 

室内は限りなくワンルームに近く、仕切りはありながらも「回遊性」をもたせた間取り。すべての部屋が見通せるので、実際の広さ以上の空間的な広がりと豊かさを感じます。

当時60歳だった母親が、父親と2人で老後を快適に過ごせるようにと考え抜かれたプランだけに、住居としての必要最小限の機能を備えたシンプルなものでありながら、折りたためる壁や回転移動式の照明など、随所に遊び心もちりばめられた「愛のある家」。それは「“狭い家”こそ、心地よい。」の究極の形。そして「未来の家の形」なのかもしれません。

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