千北 正 ブログ

「小さな家」は名作が多い。

2022.07.02

チーフデザイナーの千北 正(チギタ タダシ)です。                     久しぶりにブログの投稿をさせて頂きました。                         今回は、学生時代の想い出を含めた内容での投稿です。                     テーマは「小さな家は名作が多い」です。

建築の住宅史は「小さな家」の歴史でもあります。                        清家清の「私の家」、増沢洵の「自邸」、東孝光の「塔の家」、吉村順三の「軽井沢の山荘」など名作が多いです。そして、建築を学んだ人が挙げる好きな住宅には小さな家が多いと思います。小さな家の魅力は建築の魅力だけではなくて、「住まい方の魅力」が素直に表れているからだと思います。だから小さな家の名作は「自邸」が多い……、常識にとらわれない、自分の暮らしの器を創り出しているからだと思います。大きな邸宅にも魅力的なものは多いのですが、自分の暮らしからかけ離れすぎて、ぴんとこないものです。

その中でも個人的には、時節柄を含め建築家・吉村順三(1908~1997)の「軽井沢の山荘(1962:長野県軽井沢町:専用住宅)」が好きです。

 
その理由として、大変昔のことになりますが、学生時代の大学2年生のころ、夏期課題として「軽井沢の山荘」の図面のコピー:模写(S=1/50)と、バルサ材を使用しての模型作成(S=1/50)が、今でも心に新鮮に残っています。この「軽井沢の山荘」は、旧軽井沢銀座通り周辺から、矢ヶ崎川を渡って左に少し上った森の中に浮かび、鳥の高さに暮らす小さな住まいです。森の中の住宅の「型」を創りあげた名作で、学生時代に引率の先生方と同期学友達との軽井沢の宿泊を伴う夏期見学研修を昨日のように想いだします。

この建物は、吉村順三を代表する作品のひとつで、自身が家族や事務所所員と過ごすために建てた自邸(山荘)です。鉄筋コンクリート造のボックスの上に7.2m角の正方形のコンクリートスラブを乗せ、その上に木造の2階部分と片流れ屋根と屋上の露台を載せた自邸(山荘)です。

このように、小さな家は、小さくてもちゃんと気持ちよく暮らせる普通な感じのものです。コンセプトにとらわれすぎず、生活を犠牲にせず、楽しく心地よく暮らせる家です。

そして、よい住宅とは、普通に見えて、実は普通ではない住宅で、多くの生活者の少し先を進んでいる住まいだと思います。

ここに吉村順三の「話」を紹介して最後にします。                       「建築家として、もっともうれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれているのを見ることである。日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感じられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか」吉村順三・1965年

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