Chigita ブログ

『社員研修』を通して新たに教えられること。

2017.02.24

T&Wでチーフデザイナーをしております 千北 正(チギタ タダシ)です。
数年前から、戸建注文住宅のエクステリアデザイン(外観)、インテリアデザイン(内観)のイメージスケッチ表現の実習指導を、住宅会社の「社員研修」で講師をさせて頂くなかで、多々教えられる事があります。
私は、かつて東京目黒にある建築・インテリアのデザインを専門とした学校(ICSカレッジオブアーツ:旧インテリアセンタースクール)で、学生へデザイン表現実習指導を20年以上経験してきましたが、住宅会社で設計実務を行っている方々への即戦力指導には、大変に緊張しました。
その研修先で、よく紹介させて頂くのが、下記のフランク ロイド ライトの「落水荘」のプレゼン用のデザイン画です。
世界の歴代の建築家や、デザイナーたちは、スケッチ等が上手な方を多々見うけます。住宅デザイン等のアイデアスケッチで表現した例も多く、私が感動した作品に(下記、社員研修でも紹介した)、フランク ロイド ライトの「落水荘」の外観イメージスケッチ(トレーシングペーパーに色鉛筆表現)は、お施主様への感情移入が強く打ち出され作品で、学生時代から大変感動し、大きな影響(表現技術)を受けた作品の一つです。この「落水荘」は、アメリカの偉大な建築家の一人、フランク・ロイド・ライトが設計したカウフマン邸として、1936年にアメリカ合衆国のペンシルベニア州に建てられました。滝の上に建物がせり出しているところから落水荘(Falling water)と呼ばれています。自然と融合するかのような美しい建築です。
逸話として残っていますが、落水荘(falling water)の建主は実業家エドガー・カウフマン。当時のアメリカのデパート「カウフマンズ」のオーナーでした。建主のカウフマンはこのスケッチを一目見るなりライトに不満をぶつけた。「滝の上に家を建てるなんて聞いたことがない。私が建てて欲しいのは滝を眺める家だ。」ライトは云った。「そんなことを云っているようでは、あなたはこの建築に値しない。」カウフマンは押し黙ってしまった。周りはどうなることかとハラハラするばかり。するとライトは諭すように云った。「カウフマンさん。滝を眺めるのではなく、 滝と共に暮らすのです。」ライトの頭の中には既に滝と共に暮らす家族の物語が出来上がっていたのでしょう。それにしても建築家がここまでのパースが描けるとは驚きです・・・。
余談ですが、この建物は、福山雅治キューピーCMのキューピーハーフTVCM「サラダはクールだ」編でも背景に使われた住宅です。

       ▲「落水荘」のライト直筆の外観スケッチ    ▲現存の「落水荘」外観写真

設計段階でのデザインのイメージを相手に伝える手段には、現在ではCAD・CGは勿論ですが、アイデア段階のデザイナー自身の手描きのスケッチ(パース)は、お施主様とのイメージの共有と、これからの打合せに、更なる親近感を与えることは間違いありません。私は日頃の営業推進・設計支援業務を通し、お施主様への、プレゼンテーション業務を中心に活動をしておりますが、同時に、社団法人「建築デザイン倶楽部」にも参画し、法人のコンサルティング業務の一貫として、日本全国の住宅会社(研修社員40〜80名)へ出向き、表現技術研修で、即戦力として使えるイメージスケッチ表現(鳥瞰・外観・インテリア、等)の実技・実演指導もさせて頂いております。上記にも記しましたが、私は、住宅業界に入る前は、建築・インテリア系のデザインの専門校で、20年あまり、学生への表現実習指導として、教育畑の経験をもち、人前での実習指導には、あまり抵抗はありませんでした。しかし、毎日実際の実践・実務を行っている方々への研修には、大変な緊張が走り、私自身の日頃の作業を通した、時間の切り売りでは済まない事を強く感じた次第です。研修が行われる前の数日間は、一日の会社での自分の仕事が終わった後、夜9時ぐらいから、毎日2時間ほどの秘密訓練をしております。 全てにおいて事前の周到な準備には手を抜いたことがありません。自分でも同じ実習課題を、時間を区切り事前にシミュレーションし、疑似体験の訓練が、より確かな形で相手に伝えるための創意工夫と若干の余裕(笑顔で接する大切さ)も出てきます。

▼パース研修風景(住宅メーカーや工務店等での)写真

また、これらの社員研修のための、指導用テキスト(マニュアルやレジュメ等の作成)や、実技演習用の課題(フォーマット)づくり、その為の参考作品づくりが、日頃の実務で培ったものに対し、より自己研鑽と、日常業務の客観視ができる良いチャンスを得ることができます。60歳を超えた私ですが、社員研修の講師を通して、怠らぬ日々の実務と、日々の実務の積重ねを通して、お施主様へ伝えるための感情移入と表現の創意工夫が、自身の進化のためにも、大きな刺激を与えてもらっていることは確かです。日々初心を忘れず、緊張感ある作業を大切にしていきたいと思います。

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